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最高裁判所第二小法廷 昭和58年(オ)749号 判決 1985年3月15日

上告人

佐々木三五郎

外六名

右七名訴訟代理人弁護士

大沢三郎

被上告人

今野一子

外三名

主文

上告人川村旭、同浦田實、同高橋宜男、同池内平、同池内久雄及び同佐々木幸一の被上告人佐々木之栄に対する上告を却下する。

右上告人らのその余の上告及び上告人佐々木三五郎の上告を棄却する。

上告費用は上告人らの負担とする。

理由

上告代理人大沢三郎の上告理由について

所論の点に関する原審の認定判断は、原判決挙示の証拠関係に照らし、正当として是認することができ、その過程に所論の違法はない。論旨は、ひつきよう、独自の見解に基づいて原判決を論難するか、又は原審の専権に属する事実の認定を非難するものにすぎず、採用することができない。

上告人川村旭、同浦田實、同高橋宜男、同池内平、同池内久雄及び同佐々木幸一(以下「上告人川村旭外五名」という。)の被上告人佐々木之栄に対する上告について

民訴法七一条に基づく当事者参加の申立があつた場合、当該訴訟の原告は、同法七二条に従つて当該訴訟から脱退することができるほか、被告及び参加人の双方の同意を得て訴えを取り下げることができ、これによつて、当該訴訟は右申立によつて生じた三面訴訟関係を消失し、参加人と原告との間及び参加人と被告との間の単純な二当事者対立訴訟関係に転化するものというべきであり、かつ、三面訴訟において原告が訴えを取り下げた場合、参加人との関係でも民訴法二三六条六項の規定の適用があるものというべきである。

これを本件についてみるに、記録によれば、(一) 第一審原告である被上告人佐々木之栄は、第一審被告である被上告人今野一子、同井上みつ及び同井上武男(以下「被上告人今野一子外二名」という。)に対し原判決添付第一目録(1)(7)(8)(11)(13)(14)記載の土地の所有権確認等の請求(以下「甲請求」という。)及び同目録(2)(3)(4)(5)(6)(9)(10)(12)(15)記載の土地の所有権確認の請求(以下「乙請求」という。)をしていたが、昭和五七年二月一九日の被上告人今野一子外二名の出頭した原審第一三回口頭弁論期日において、乙請求に係る訴えの取下の趣旨を含む同日付の準備書面を陳述することによつて、乙請求に係る訴えを取り下げたこと、(二) 被上告人今野一子外二名は、同期日において右訴えの取下に同意せず、異議も述べなかつたこと、(三) 上告人川村旭外五名は、同日、被上告人佐々木之栄及び被上告人今野一子外二名を相手方として、民訴法七一条に基づき、乙請求に係る訴訟につき原判決添付第一目録(2)(3)(4)(5)(6)(9)(10)(12)(15)記載の土地の所有権確認を求めて当事者参加の申立をし、これによつて、乙請求に係る訴訟については被上告人佐々木之栄、被上告人今野一子外二名及び上告人川村旭外五名の三面訴訟関係が生じ、右三面訴訟関係は、以後甲請求に係る二当事者対立訴訟とともに訴訟係属の状態にあつたこと、(四) 被上告人今野一子外二名は、被上告人佐々木之栄の乙請求に係る訴えの取下にその後も異議を述べず、民訴法二三六条六項によつて、訴えの取下があつた日である昭和五七年二月一九日から三か月を経過した同年五月二〇日、訴えの取下に同意したものとみなされたこと、(五) 他方、上告人川村旭外五名は、乙請求に係る訴えの取下の趣旨を含む右準備書面の送達は受けなかつたものの、同年九月一四日の原審第一五回口頭弁論期日における裁判官の交替による弁論更新の際、更新手続として右準備書面を含む従前の口頭弁論の結果が各当事者によつて陳述されたところ、これに対し異議を述べず、その後も異議を述べなかつたこと、そして、(六) 上告人川村旭外五名は、原審において被上告人佐々木之栄に対しその請求の全部につき勝訴の判決を受けていることが明らかである。したがつて、被上告人佐々木之栄の乙請求にかかる訴えの取下は、被上告人今野一子外二名がこれに同意したものとみなされたほか、上告人川村旭外五名もまた少なくとも昭和五七年九月一四日の原審第一五回口頭弁論期日から三か月を経過した同年一二月一五日これに同意したものとみなされたことによつて、その効力が生じたものというべきである。そうすると、被上告人佐々木之栄、被上告人今野一子外二名及び上告人川村旭外五名についていつたん生じた乙請求に係る訴訟の三面訴訟関係は、乙請求に係る訴えの取下によつて消滅し、以後上告人川村旭外五名と被上告人佐々木之栄との間及び上告人川村旭外五名と被上告人今野一子外二名との間の各二当事者対立訴訟関係に転化したのであるから、上告人川村旭外五名が被上告人佐々木之栄に対してした上告は、上告人川村旭外五名が被上告人佐々木之栄に対し全部勝訴の判決を受けている以上、上告する利益を欠き、不適法であつて却下を免れない。

よつて、民訴法四〇一条、三九九条ノ三、三九九条、九五条、八九条、九三条に従い、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官鹽野宜慶 裁判官木下忠良 裁判官大橋 進 裁判官牧 圭次 裁判官島谷六郎)

上告代理人大沢三郎の上告理由

<省略>

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